電動化が不可逆の流れとなった今、アウディ A5カブリオレのようなオープンカーの立ち位置は静かに変わりつつある。これは内燃機関とオープンエアの両方を味わえる、最後の世代の記録でもある。

アウディ A5カブリオレ 2.0TFSIクワトロ スポーツ|過渡期に残された選択肢
このA5カブリオレは2017年式、87,400kmを刻んだ個体である。電動化が本格化する前、内燃機関がまだ主役だった時代の設計思想がそのまま残っている。2.0TFSIエンジンとクワトロの組み合わせは、効率よりも体験を優先した構成だ。また、オープントップという機構自体、電動化とは相性が悪い。バッテリーの重量と電動幌の重さは燃費にもレイアウトにも不利に働くからである。EVのカブリオレがいまだに数少ないのは偶然ではない。この個体は、内燃機関時代の最適解がそのまま形になった最後の世代と言っていい。
クワトロが消える前の記録
四輪駆動システムのクワトロは、アウディの看板技術として40年以上の歴史を持つ。しかし電動化が進めば、四駆は機械式ではなくモーター制御による疑似的なものに置き換わっていく。このA5に搭載されるクワトロは、トランスミッション経由で前後に駆動力を機械的に配分する、いわば「生身の四駆」である。一方で、EV時代の四駆はソフトウェアの比重が増し、機械の手応えは薄れていく傾向にある。87,400kmという走行距離は、路面を選ばず走り込んできた証でもある。機械がまだ機械として仕事をしていた時代の空気を、この一台は保っている。
幌の中にある贅沢
内装に目を向けると、このスポーツグレードは革シートとアルミトリムの組み合わせで、質実な大人の空間を仕立てている。電動幌はおよそ15秒で開閉し、50km/h程度の走行中でも操作可能だ。しかし今後、電動化とともにボディ剛性や軽量化の優先順位が変わり、ソフトトップ自体が姿を消す可能性もある。幌をたたんだ時の後方視界の狭さは個性であり、デメリットでもあるが、それも含めてこの世代らしい割り切りだ。内装の質感は過剰に飾らず、運転する人間に静かに語りかけてくる。
数字が語る希少性
中古車市場において、A5カブリオレのクワトロ仕様は決して台数が多い部類ではない。2.0TFSIとクワトロと幌の組み合わせは、今後のモデルチェンジで再現されない可能性が高い。次世代のA5系はマイルドハイブリッドやフルEV化が既定路線とされ、同じ構成の新車はもう作られないからである。価格は2,680,000円、走行距離87,400kmという数字は、程度の良さと手頃感のバランスが取れた水準だ。また、この価格帯でクワトロ付きオープンが選べる状況自体、今後は縮小していくと見ていい。数字そのものが、この車の立ち位置を雄弁に物語っている。
最後に残るのは体験そのもの
電動化の先にある未来は、静かで速く、効率的な移動を約束するだろう。しかしA5カブリオレが持つ、エンジン音と風と機械式四駆が重なる体験は、別の価値基準で測られるべきものだ。この個体を選ぶことは、過去を懐かしむことではなく、今しか乗れない組み合わせを選び取る行為である。走行距離や年式は数字に過ぎないが、その数字の裏にある時代の空気は再現できない。最後の世代だからこそ、今、価値がある。
アウディ A5カブリオレ 2.0TFSIクワトロ スポーツ スペック・仕様
| メーカー | アウディ |
|---|---|
| グレード | A5カブリオレ 2.0TFSIクワトロ スポーツ |
| 年式 | 2017 |
| 走行距離 | 87,400 km |
| 外装色 | ホワイト |
| ハンドル | 右 |
| 排気量 | 1,980 cc |
| 燃料 | ガソリン |
| 車検 | 2026年11月 |
| 修復歴 | なし |