

実用を磨いた一台に、足りなかった一点
GLBは「実用的なラグジュアリー」というメルセデスの思想を、コンパクトな車体に凝縮したモデルである。Cセグメントの枠に収まる全高と全長を持ちながら、3列シートで大人7人が乗れる。日々の送迎や買い物、週末の遠出まで、暮らしのあらゆる場面を一台でこなす設計だ。 今回のGLBは納車されて日がたっていない、新車の香りすら纏わせた状態で上賀茂の工房にやってきた。。使い込まれた車ではなく、これから時間を重ねていく一台である。オーナーが日常の足として長く付き合うなら、触れる場所の質感こそが所有の満足を左右する。毎日必ず手が触れるドアハンドルは、その最たる部位だった。 Gクラスを思わせる直立したフロントマスクとスクエアなヘッドライト、そして箱型のシルエット。この力強い造形に対して、既存のハンドルの色はやや穏やかに映った。ボディ全体を引き締める黒をここに置けば、タフな表情が一段と完成する。GLBクラスの個性を、細部から仕上げる発想である。
複雑な形状を染め切り、動く部分は守る
ドアアウターハンドルは、見た目以上に複雑な造形をしている。曲面と段差が入り組み、塗料が回りにくい箇所が随所にある。今回は色を変えるカラーチェンジであり、元の色を残さず隅々まで染め切る必要があった。 一方で、可動部分に塗料をのせると、動作時の摩擦で塗膜が剥がれるおそれがある。そこで、色を入れる面と守る面を細かく切り分け、緻密なマスキングを施した。作業の要点は次のとおりである。- 形状の隅々まで塗料を行き渡らせ、色の染め残しを出さない
- 可動部分には塗料をかけず、摩擦による剥がれを未然に防ぐ
- グロスブラックはタオル傷が目立つため、組み付け時にフィルムで保護しながら仕上げる

黒を長く保つために選んだ、自己修復のクリア
グロスブラックは、艶が深いぶん傷が目立ちやすい色である。しかもドアハンドルは、手との摩擦で生活キズが付きやすい部位でもある。美しい黒を塗るだけでは、数か月で曇ってしまう。 そこで、仕上げのクリアにセルフヒール機能を備えたものを選定した。細かな擦り傷は塗膜自体の復元力で目立たなくなり、日々の使用でも美観が長く続く。使う場所の特性から逆算して材料を選ぶことが、この作業の核心だった。 FOURSIDEは、車両と用途に応じて材料を柔軟に選び、最善の組み合わせを導く。その判断が、見た目だけでなく使い続けたときの価値を支える。箱型の実用車に宿った黒は、毎日の開閉のたびに、静かにその違いを伝えるだろう。メルセデス・ベンツ GLBクラスの新しい日常が、ここから始まる。










