日産 セレナeパワーは、家族の毎日を黙って支える実用車である。その顔つきを傷ひとつない状態に戻す作業を、パールホワイトの再現という一点から追った。
毎日の便利さに価値があるミニバンの、顔という弱点
日産 セレナeパワーの魅力は、派手さよりも日々の使い勝手にある。送迎、買い物、家族旅行。狭い駐車場での乗り降りや荷物の積み下ろしまで考え抜かれた設計は、所有者の負担をそっと減らしてくれる。
だが、毎日使う車だからこそ、傷は避けがたい。今回入庫したのは、2021式のC27型、型式HFC27である。2019年のマイナーチェンジを経た後期型にあたり、フロントバンパーに補修を要する傷があった。
この車はグリル、ヘッドライト、バンパーのラインが連続している。そのため、補修部分の形状や色の違いが、顔全体の印象を崩しやすい。小さな傷でも、手を抜けば目に残る車なのだ。
QABというパールホワイトを、曲面の上で合わせる
一見すると、傷を直して白く塗り直すだけの作業に思える。しかし今回のカラーはQAB、パールを含むホワイトである。単に白さを合わせるだけでは、光の当たり方で補修跡が浮かび上がってしまう。
作業は、次の順序で積み重ねた。
- 傷を完全に消すための下地処理
- バンパー本来の曲面とラインを崩さない形状の修正
- パールの見え方まで考慮した塗装
パールは、塗り重ねる厚みや吹き付けの角度で表情が変わる。平らな面なら容易でも、バンパーのように曲面が連続する部位では、光の反射が刻々と変わる。だからこそ
色そのものよりも、曲面の上でどう見えるかを基準に仕上げを組み立てた。
なお、C27は同じ型式でもグレードによってバンパーやグリルの造形が異なる。補修部品を扱う際は「C27用」という括りでは足りず、実車の仕様確認が欠かせない。今回も、車両そのものを見ることから始めている。
修理したことを感じさせない、という基準
私たちが目指すのは、傷を直すことではなく、修理した事実を感じさせない状態に戻すことである。仕上がりを確かめるのは、正面からだけではない。斜めから、遠目から、光の角度を変えながら、周囲のパネルとの連続性を見る。
所有する意味が日々の便利さにある車は、そのぶん外観の小さな乱れが気持ちに残りやすい。セレナeパワーが本来の表情を取り戻すことで、家族を乗せて走る時間はまた静かに続いていく。整備とは、その価値を損なわずに守り続ける仕事だと考えている。