新車のスズキ エブリイ PCに、オーディオ・ETC・ドライブレコーダーを納める。内装に傷をつけることなく慎重に行った作業の記録である。
傷ひとつ許されない新車という条件
ホワイトのスズキ エブリイは、走行距離がほぼゼロの状態で上賀茂のガレージに到着した。新車の作業が中古車と決定的に違うのは、やり直しが利かない点にある。一度付いた傷は、納車後のオーナーが毎日目にする現実になる。
ここで言う傷とは、目立つ大きなものだけではない。内張りを外す際のわずかな擦れ跡、ツメの割れ、樹脂パネルの白化。いずれも作業中の判断ひとつで防げる。取材ノートにある「新車なので内装に傷をつけないようにしてます」の一文は、控えめな言葉だが、この現場の前提そのものである。
施工の依頼は三点。2DINオーディオ、ETC本体の取付とセットアップ、そしてドライブレコーダーの取付である。いずれも配線を車内に引き回す作業で、内装への接触を避けて通れない。難所は個々の機器ではなく、三つの作業が同じ内装の中で交差することにあった。
外す順序と手の置き方を決める
作業の質は、工具を手に取る前にほぼ決まる。まず行ったのは、どのパネルをどの順序で外し、どこに配線を通すかの設計である。三つの機器の配線を別々に考えると、同じ内装を何度も開閉することになる。開閉の回数は、そのまま傷のリスクの回数である。
そこで、電源の取り出しやアース、ルート取りを一体で計画し、内張りの脱着は必要最小限に絞った。パネルを外す際は養生を施したうえで、ツメの位置を確かめ、力を一点に集めない。無理にこじらず、外れる方向を見極めてから手を入れる。これが新車の樹脂を守る基本である。
- 2DINオーディオ:センター周りのパネルを養生して脱着し、本体を収める
- ETC:本体の取付に加え、車両へのセットアップまで行う
- ドライブレコーダー:取付一式を含め、配線は内装の内側に隠して通す
エブリイの室内は、商用の血筋を引く実用的な造りで、パネルの合わせも明快である。それでも新車特有の硬さがあり、ツメは中古車よりも固く噛んでいる。その硬さを力で解決しないところに、専業の仕事の差が出る。
見えなくなる作業にこそ手間を使う
取付が終われば、配線もツメも内張りの奥に隠れ、誰の目にも触れなくなる。だからこそ、見えなくなる部分の処理に手間をかけた。配線は束ねて固定し、走行中のビビり音や干渉を避ける。純正の状態に近い静けさを保つことも、新車への取付では品質の一部である。
ETCは取付だけでなくセットアップまで済ませて引き渡す。ドライブレコーダーも配線の見え方まで含めて仕上げる。オーディオを収めたセンター周りは、パネルの合わせ目に隙間やズレがないかを確認し、新車の佇まいを損なわないことを最終の基準とした。
仕上がったエブリイは、後付けの機器が三つ加わったことを、使うときまで感じさせない。納車の日に付いていた無傷の内装は、そのまま持ち主のものになる。派手さのない結果だが、難所を越えた仕事の証は、むしろこの静かさにある。