

ソリッドカラーの奥にある陰影という難題
クレヨンは一見すると素直なソリッドカラーだが、実際にはボディラインの起伏を強く反射する塗色である。718スパイダーの張り出したフェンダーやサイドの絞り込みが、光の当たり方ひとつで陰影として浮かび上がる。だからこそ塗装面にわずかな曇りや洗車傷が残っていると、その陰影が濁って見えてしまう。まずこの点を作業前に見極めることが、仕上がりを左右する最初の分岐点になる。 そのため今回はコーティング前の下地処理に通常より時間をかけた。艶を足す作業ではなく、すでにある地の質感を取り戻す作業だと捉え直すことが要点である。同じ症状に悩むオーナーには、まず塗装面の状態を明るい場所で斜めから確認することを勧めたい。クレヨンに限らず、単色でありながら陰影が出やすい塗色は下地の完成度がそのまま結果に出る。
ファインラボ ヒールプラスが担う保護と自己修復
下地を整えた上で選んだのが、ファインラボ ヒールプラスである。優れた保護性能に加えて自己修復性能を備えており、日常使用で生じる微細な傷を自ら均してくれる点が心強い。718スパイダーのようにオープンエアで走る機会が多い車両は、砂塵や紫外線に晒される頻度も高く、こうした自己修復の恩恵を実感しやすい。塗装本来の透明感を保ちながら、立体感のある陰影を長く楽しめる仕上がりを目指した。 幌についても専用コーティングを施した。幌は塗装とは異なる素材であるため、同じ感覚で扱うと風合いを損ないやすい。撥水性や防汚性を高めつつ、素材本来の質感を殺さない仕上げを心がけている。オープンカーを所有するオーナーには、ボディだけでなく幌のメンテナンスも一体で計画することを提案したい。
ホイールとインテリアまで含めた総合的な保護
ボディと幌に加えて、ホイールコーティングは両面、ウィンドコーティングは3面、そしてインテリアコーティングまで一通り施工した。718スパイダーは走りを楽しむための車両であり、ブレーキダストや雨天時の視界、シートやパネルの経年変化など、日常の使用感に直結する部分こそ手を抜けない。部分的な処理ではなく、車両全体を面として捉えることで初めて本来の性能と質感が長く維持される。 仕上がったボディは、クレヨンという色が持つ落ち着きと上質さを損なわずに、より深みのある陰影を纏っていた。同じ悩みを抱えるオーナーに伝えたいのは、コーティングは艶を足す魔法ではなく、素の状態を正しく引き出し、それを保つための仕組みだということである。その視点を持てば、次のメンテナンス計画も自ずと見えてくるはずだ。















