

美を構造に落とし込んだ車体が求めるもの
DB11は、空気を逃がす通路やエアロブレードをボディに組み込み、高速走行時の揚力を抑える設計を持つ。大きなクラムシェルボンネットと滑らかな面構成は、パネルの分割線さえ目立たせない。接着アルミニウム構造によって軽量性と剛性を両立させ、V12の動力性能を単なる速さではなく、快適な長距離走行と燃費効率を伴うグランドツアラーとして成立させている。この一台が纏う美しさは、デザインの装飾ではなく構造そのものに宿っている。だからこそ、ホイールの傷は全体の印象に大きく影響を及ぼす。「美は足元から」は誰が言い始めた言葉だろうか。発祥はともかく、車にも当てはまる格言であることには違いない。
ホイール研磨という、形状への敬意
今回の作業は、ホイールの傷を研磨によって取り除くことから始まった。ただし傷を消すことだけが目的ではない。研磨の過程で周囲との間に不自然な段差や面の歪みが生じれば、ホイール本来の形状そのものが崩れてしまう。DB11の足もとが持つ曲面の連続性を保ちながら、下地を丁寧に整えていく。この工程こそが今回の難所であり、職人の手の感覚だけが頼りになる部分である。 続くカスタムペイントでは、グロスブラックへの色変えを施した。ホイールはスポークの側面が深く切り抜いたような形状を持ち、塗料を均一に行き渡らせることが容易ではない。見えにくい箇所にこそムラが出やすく、そこを均すことが仕上がりの質を決める。研磨と塗装、二つの工程を通じて、DB11の足もとは傷を抱える前の姿を超えて、静かな艶を取り戻した。
意匠価値を守るという選択
DB11という車の価値は、乗り手が長く大切に付き合うことで初めて保たれる。傷を放置せず、構造を理解した上で手を入れることは、デザインと機能が一体化したこの車に対する、最も自然な向き合い方である。グロスブラックに整えられたホイールは、ボディが持つ空力と静謐を支える土台として、これからも走りを支え続ける。

