

荷室の縁に残っていた、前オーナーの暮らしぶり
入庫したレンジローバーは、リアゲートとリアバンパーに傷みが集中していた。毎日の暮らしの中で被る可能性のある傷である。 ランドローバーは「Above and Beyond」を掲げ、悪路を走破する力と極上の快適性を両立させてきたメーカーである。だがその車も、実際の持ち主にとっては毎日の足であり、荷物を積み、街に停め、家族を乗せる道具でもある。 ここでいう傷みは、一度の事故によるものではない。使われ続けたことで積み重なった疲れでもある。だからこそ、小手先でごまかさず、原因まで遡って直す必要があった。
伸びたプラスチックをどう戻すか。難所は素材との対話にあった
今回の施工内容は次のとおりである。- リアゲート修理
- リアバンパー脱着分解
- リアバンパーアッパー・ロア修理
- リアバンパーロアモール、リアバンパーモール
- 右フロントホイール修理
- フロントガラス補修

下地を薄く仕上げる。数年後のトラブルまで見据えた板金
こだわったのは、樹脂パーツの修正でも板金と同じ姿勢で臨むことだった。下地剤は厚く盛れば作業は楽になるが、厚みは経年で割れや浮きの原因になる。だから、いかに薄く繊細にこなせるかを常に考えた。 形を精密に出しておけば、下地剤に頼る量は自然と減る。修理の九割は塗装前に決まっているというのが、私たちの考えである。薄く仕上げた下地の上に塗装を重ねることで、数年後のトラブルを未然に防ぐ。 最新世代のレンジローバーは、無駄な凹凸を削ぎ落とした「リダクショニズム」の造形を持つ。継ぎ目の少ない滑らかな面は、わずかな歪みも隠せない。だからこそ、リアバンパーの面とリアゲートのラインが寸分違わず揃うまで調整を重ねた。 修理を終えた後ろ姿は、傷の記憶を消し去ったのではなく、その歴史を受け止めたうえで、持ち主へ渡せる姿に整ったと言える。レンジローバーが本来持つシームレスな佇まいが、再び戻った。



















