

カラーコード223という難題
今回のレクサス LMは、カラーコード223のブラックパールをまとっていた。ガラスフレークが際立つギラギラとした発色を持つ一方で、バフ目そのものは肉眼で目立ちにくい。だが油断は禁物である。バフ目の目慣らしを怠れば、光の当たり方によって塗装面全体が白くボケて見えてしまう。今回はコンパウンドとバフの選定に相応の時間を割いた。派手な色ほど、地味な工程の精度が仕上がりを決める。 フロント修理に伴い、モデリスタフロントリップの交換とフロントバンパーの脱着も実施した。取り外しと組み付けの精度が甘ければ、後々のセンサー誤作動や微細な段差につながる。だからこそバンパー脱着後にはセンサー学習を丁寧に行い、LMが持つ先進安全装備が正しく機能する状態まで戻している。見えない部分の仕事こそ、後席の乗員に安心を届ける土台になる。
範囲を広げる、という判断
修理範囲そのものは決して広くない。右スライドドア周辺の限られたパネルの補修である。しかし、そこだけを新品同様に仕上げてしまうと、隣接するパネルとの間に不自然な生活感の差が生まれる。艶の均一性が崩れれば、フラグシップにふさわしい佇まいは損なわれる。そこで隣接パネルにもグラデーションをかけながら研磨を実施し、境目のない一枚の面として仕上げることにこだわった。 この判断には代償も伴う。隣接パネルを研磨するということは、そこに施されていたコーティングごと磨き落とすことを意味する。ディテールは整うが、保護層は失われる。そこで修理箇所だけでなく隣接パネルまで含めた範囲に、コーティングの再施工を行った。使用したのはFEYNLAB HEAL PLUSである。見た目の均一性と、機能としての保護性能。どちらも妥協しない選択だった。
手で触れて分かる仕上がり
レクサス LMが掲げる「素に戻れる移動空間」という思想は、走行中の静粛性だけで完結するものではない。ドアを開け閉めする瞬間の手触り、光の下で塗装面を見つめたときの深み。そうした些細な感覚の積み重ねが、乗員の心をくつろがせる。今回の再施工後、面を撫でるとフレークの粒立ちが均一に沈み込み、白ボケの気配は一切見当たらない。 威圧感ではなく品格を纏うスピンドルボディの佇まいは、こうした見えにくい部分への配慮によって静かに支えられている。