

黒を塗るのではなく、艶を作るという難題
今回の依頼は、マカンGTSのリアバンパーロアの補修塗装である。板金修理としては小規模に見えるが、現場は着手前から慎重だった。りゆうは対象箇所の一つに、GTS専用のブラックアウト部位があったことだ。 ポルシェは「すべてのポルシェはスポーツカーである」という信念で、SUVにも妥協のない走りを与えてきた。GTSはその思想を最も濃く体現するグレードで、ブラックをアクセントにした外観も設計の一部である。ロア部分のマットブラックは、その表情を足元から締める要素だ。 厄介なのは、マットブラックが一般的なソリッドやメタリックと勝手が違う点にある。光沢色なら磨きで整えられるが、マットは艶の質感そのものが色である。わずかな艶の差が、そのまま補修跡として目に映る。
判断の連続である調色と希釈、そして塗り込み
マットの補修では、色を合わせるだけでは足りない。素材との相性を踏まえた塗料と材料の選定に始まり、あらゆる工程で判断が求められる。今回、判断を要した主な項目は次のとおりである。- 塗料・材料の選定:バンパー素材との相性を見極め、艶の出方が安定する組み合わせを選ぶ
- 微妙な色味の調整:黒の中にある青みや赤みの差を、純正部位と並べて詰める
- シンナーの希釈量:希釈の違いが艶と塗膜の状態に直結するため、数字より塗膜の様子を見て決める
- 塗装する範囲と塗り込み方:境界を目立たせない範囲設定と、塗り重ねの量で艶を揃える

GTSの質感を損なわないという基準と、コーティングまでの一貫対応
目指したのは、補修したと分からない状態ではなく、マカンGTS本来の質感を損なわない状態である。440PSのV6ツインターボと専用の足回りに加え、サテンブラックのホイールやアルカンターラの内装まで、このクルマは質感の統一で成り立っている。バンパーロアだけが違う艶では、全体の調和が崩れる。 仕上がりの確認は、周囲のブラックアウト部位と並べて、角度や光の当たり方を変えながら行った。マットブラックの艶は、光の入り方で表情が変わる。単一の角度では見抜けない差を、複数の視点から潰していくのが最後の工程である。 FOURSIDEはコーティングプロショップでもある。外装修理に伴うコーティングの再施工まで、ワンストップで引き受けられるのが強みだ。修理と保護を別々の工房に任せれば、責任の所在も仕上がりの方向性も分かれてしまう。マカンの外装を一貫した視点で仕上げられることが、この種の難所に向き合ううえでの安心につながる。










