

Celeste Treviという難題
今回入庫したローマ スパイダーは、Celeste Trevi(訳:トレヴィの青)という淡いブルーグリーン系のボディカラーを纏っていた。この色は光の当たり方ひとつで印象が一変する。曇天では静謐な青灰色に沈み、直射日光下では透明感のある水色に浮かび上がる。担当した技術者が最初に向き合ったのは、この不安定さそのものであった。 淡色系メタリックは下地の粗を隠せない代わりに、仕上げの完成度がそのまま見え方に直結する。ローマのように面の起伏が少なく流麗なボディでは、その差が一段と顕著に出る。だからこそ、下地処理の段階から妥協は許されなかった。
複数光源という判断基準
作業中、最も時間を割いたのはパネルごとの艶の均一化である。ガレージ内の照明だけで判断すれば、屋外に出した瞬間に印象が崩れることがある。そこで技術者は自然光、LED照明、白熱灯と光源を切り替えながら、各パネルの発色と質感を繰り返し確認した。 この工程を怠ると、フロントフェンダーとドアで微妙な艶ムラが生じ、Celeste Trevi特有の奥行きが損なわれてしまう。一枚一枚の光の返し方を見比べながら整えていく作業は、地味だが最も神経を使う局面であった。 ボディコーティングに加え、幌コーティング、ホイールコーティング(両面)、シート&トリムコーティングまで含めた総合的な施工を行った。- ボディコーティング(FEYNLAB ULTRA・5年耐久)
- 幌コーティング
- ホイールコーティング(両面)
- シート&トリムコーティング
塗装が語り始める瞬間
すべての工程を終えたローマは、Celeste Trevi本来の透明感を取り戻していた。FEYNLAB ULTRAの高い光沢性能によって、流麗なボディラインがより深く映り込み、光を受けるたびに表情を変える艶が生まれている。 グランドツアラーの優雅さと現代フェラーリの緊張感を併せ持つこのモデルにとって、艶とは単なる美観ではなく存在感の核である。難所であった淡色メタリックの見極めこそが、この一台の仕上がりを支えている。


