

橙という色が語るもの
この個体のボディカラーは橙である。艶やかな塗装は光の入り方で表情を変え、直射日光の下では熾火のように、日陰では落ち着いた琥珀色に沈む。DB11のクーペラインは、V12モデルに比べてフロントが軽い分、ノーズ先端の面がわずかに鋭く見える。塗装の状態を確認するだけでも、このボディカラーは指先の感覚を変えてくる。艶の戻り方一つで、下地の状態まで読み取れるからだ。 AMG製4.0リッターツインターボV8は、最高出力510PS、最大トルク675Nmを発生する。0-100km/hは約4.0秒。数字だけを見れば十分に速いが、実際に運転席に座って感じるのは、V12のような荘厳さではなく、もっと野性的でエモーショナルな排気音である。この個体の橙のボディには、その俊敏さがよく似合う。
エアコンフィルターが教えてくれたこと
今回の納車前点検で最も苦戦したのは、意外にもエアコンフィルターの交換だった。特有の狭い作業スペースに手を入れながらの脱着作業は、これまで手掛けた中でも一番の難所だったと言ってよい。加えてメンテナンスリセットが手動でもテスターでも一度は通らず、原因不明のまま作業が止まった。最終的にはテスターで再度リセットを試みたところ通過し、一時的な不具合のようなものだったと判断している。地道な確認の積み重ねがなければ、そのまま終わらなかった作業である。 点検では他にも、FUCHS GT1 FLEX3 5W-40によるオイル交換、ガスケットとオイルフィルターの新調、フロントワイパーの交換などを一式実施した。内外装は納車前点検として細部まで確認し、見えない部分にも手を抜かない。- 納車前点検一式
- FUCHS GT1 FLEX3 5W-40オイル交換
- ガスケット・オイルフィルター交換
- エアコンフィルター交換
- フロントワイパー交換

仕上がりに宿る手応え
点検の後半では、FEYNLA Ver3 ライトプランでのフィルム施工、フロントプロテクションフィルムの貼付、ETCセットアップ、そしてスペアキー作成も併せて行った。フロント周りに施したプロテクションフィルムは、走行風にさらされる部分の光沢を保ちながら、飛び石などの微細な傷から塗装を守る。橙の艶に薄い膜が一枚重なることで、光の反射がわずかに柔らかくなるのが分かる。 2+2シーティングの車内は、レザーとアルカンターラの質感が申し分なく、当時としては先進的だったインフォテインメントも動作は良好だった。DB11という一台を次の乗り手に手渡す前に、我々が最後に確かめたのは、走り出す前の静かな信頼感だったように思う。

