上賀茂の工房に持ち込まれた一台のトヨタ クラウンハイブリッド RSは、フロントの造形に長年の使用痕を抱えていた。そこには「快適なセダン」では終わらなかった一台の履歴が刻まれていた。
2018年式という時代の証言
2018年に登録されたこの個体は、220系クラウンが「いつかはクラウン」の看板を掛け直した直後の世代である。TNGAプラットフォームによって剛性を高め、ニュルブルクリンクでの走り込みを経て仕上げられた足回りは、歴代のクラウンとは明らかに異質な性格を持つ。RSという名が示す通り、この車は保守的な高級車ではなく、運転する楽しさを持ち込んだ世代だったのだ。
大柄なボディでありながら自然に旋回するハンドリング、静粛性とスポーティさの両立、そして長距離でも疲れにくい懐の深さ。RSグレードを選んだ前オーナーは、恐らくこの車を「移動の道具」ではなく「操る対象」として付き合ってきたのだろう。装着されていたAIMGAINのエアロパーツは、その意思の表れだったと想像できる。
取り外しの現場で見えたもの
今回の作業はAIMGAINエアロパーツの取外しと取付、フロントスポイラーの塗装、そしてフロントアンダースポイラーの交換を主軸とする内容だった。作業を進める中で最も手を焼いたのは、左右サイドステップの取り外しである。
ナッターでかしめられた土台が共回りしてしまい、簡単には抜けなかった。長年の締結と振動が土台を一体化させていた証拠だろう。
フロントリップは社外品のFRP素材だったため、塗装前の下地作業にも時間をかけた。
巣穴の有無を丁寧にチェックし、パテで面を作り直してから塗装に入るという手順を踏んでいる。社外パーツは個体差が大きく、歪みや変形が潜んでいることも珍しくない。クラウンのような素性の良い車体に対して、パーツ側の精度が追いついていないケースもあるのが実情である。
新調されたAIMGAIN純VIP SPORTの表情
今回新たに取り付けたのは、AIMGAIN純VIP SPORTのフロントアンダースポイラーである。既存のエアロとの整合を取りながら、フロントバンパーのコーティングも再施工し、見た目だけでなく塗装の耐久性まで含めて仕上げ直した。
取付前には歪みや変形、巣穴を細かく確認し、修正できる箇所は修正してから車体に合わせるという工程を経ている。これは既製品をそのまま組むのではなく、車体との相性を一つずつ確かめる作業だ。
仕上がった姿は、220系が目指した「運転して楽しいクラウン」という設計思想に、もう一段の存在感を加えたものになっている。トヨタ クラウンという車格の中で、エアロパーツは単なる装飾ではなく、走りへの姿勢を可視化する装置なのだと、今回の作業を通じて改めて実感させられた一台だった。