ディフェンダーが宿す道具の魂、板金という対話

ディフェンダー|板金塗装|京都
道具として過酷な環境を走り抜けるために生まれたディフェンダーは、ラグジュアリーの皮を纏っても本質を変えない。左フロントフェンダーの一枚に刻まれた傷が、その本質と向き合う機会となった。
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D7xという新しい骨格が突きつけた現実

現行世代のディフェンダーは、ラダーフレームからモノコック構造「D7x」へと大転換を遂げた。旧来の無骨さを保ちながら、内部は完全にデジタル化された新世代の車両である。今回入庫した個体もその一台で、左フロントフェンダーに損傷を抱えていた。フェンダーの鈑金という、一見ありふれた作業の内側に、この車が背負う設計思想の複雑さが潜んでいた。 ディフェンダーというクルマは「どこへでも行ける」という価値観を現代に翻訳した存在だ。その哲学を支えるボディ構造は、見た目の印象以上に緻密に設計されている。今回のフェンダーもまさにそれを体現しており、単純な一枚板ではなく、鋼板が二枚合わさった袋構造になっていた。当初予定していたハンマー・ドリーでの板金作業は、この構造の前に通用しないと判断せざるを得なかった。
ディフェンダー|板金塗装|京都

スタッドに持ち替えた職人の判断

袋構造という壁にぶつかった時点で、作業は方針転換を迫られた。ハンマーとドリーで内側から支えながら叩き出す従来の手法は、二重構造の内部にアクセスできない以上、成立しない。そこで選んだのがスタッド溶植による引き出し作業である。表面に小さなピンを打ち、そこから外側へ引く力で歪みを整えていく、より繊細な技術が求められる方法だ。 この引き作業には、パテの厚みや際の処理に細心の注意が必要になる。特に今回の損傷箇所はパテの際が目立ちやすい位置であったため、研ぎ出しの工程には通常以上の神経を使った。塗装面に段差やムラを残さないための地道な作業が、最終的な仕上がりの静けさを支えている。ディフェンダーの武骨な佇まいの裏には、こうした繊細な手仕事が積み重なっている。
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バラさない選択が守るもの

今回の施工は左フロントフェンダーの鈑金に加え、左フロントオーバーフェンダーの脱着、右フロントドアと右リアドアの修理、そして付属品の脱着と塗装一式にまで及んだ。範囲は広く見えるが、実際の作業では分解を最小限に留める判断を貫いている。
  • 左フロントフェンダー 鈑金
  • 左フロントオーバーフェンダー 脱着
  • 右フロントドア 修理
  • 右リアドア 修理
  • 付属品脱着および塗装一式
バラす箇所を増やせば作業は進めやすくなるが、それは同時に車体本来の組み付け精度を崩すリスクでもある。修理範囲を小さくまとめる判断は、遠回りに見えて、実は最も車体に負担をかけない道である。ディフェンダーというクルマを所有するとは、こうした一つひとつの判断の積み重ねを信頼することに他ならない。走破性と快適性という二面性を持つこの一台は、日常の傷を丁寧に癒やされることで、また次の冒険へと歩み出していく。

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