

センサーの壁に阻まれた裏押し出し
今回のX7は、バックドアパーツの交換とリアバンパーの修理を軸とした施工である。まず着手したのはリアゲートテールランプの脱着とリアバンパーの脱着分解だ。損傷箇所を確認すると、変形はよりによってセンサーのすぐ近くに集中していた。裏側から押し出す通常の手法は、センサー本体やステーに干渉するリスクと常に隣り合わせになる。 力を入れれば形は戻せる。しかしセンサーを傷めれば本末転倒だ。職人はまず、押し出せる範囲とそうでない範囲を慎重に見極めることから始めた。無理に完全復元を狙わず、安全に動かせる限界まで裏から押し出し、残る歪みはパテ成形に委ねるという判断を下した。この線引きこそが、この修理の分水嶺だったといえる。
パテ成形とマット塗装が支える面の記憶
押し出しで追い込みきれなかった面は、パテで丁寧に形を作り直していく。リアバンパーモールの変形修理もあわせて行い、X7本来の面の流れを一本ずつ取り戻す作業だ。ここで妥協すれば、どれほど塗装が美しくても目は違和感を拾ってしまう。だからこそ成形の段階で、光を当てながら何度も面を確かめる。 塗装代一式にはマット塗装が含まれる。マットカラーは艶ありと違い、下地のわずかな凹凸や色のブレがそのまま質感の差として現れてしまう塗装だ。限定色ゆえに色見本も少なく、調色は経験と勘の勝負になる。それでもFOURSIDEは正確な調色にこだわり抜き、既存のボディカラーと違和感なく溶け合う一面に仕上げた。
フラッグシップにふさわしい仕上がりへ
G07後期型のX7は、BMWのSUVラインナップにおける頂点に立つ一台だ。上下分割ヘッドライトや大型イルミネーショングリルが放つ存在感は、単なる移動手段を超え、ステータスそのものを体現している。限定マットカラーはその特別感をさらに引き上げる要素であり、傷ひとつ、面のよじれひとつが全体の印象を左右してしまう。 センサー際という制約の中で押し出しの限界を見極め、パテ成形と正確な調色で面と色を取り戻す。この一連の判断こそが、今回のX7の修復を支えた技術の核心である。派手さはないが、確かな仕事の積み重ねが、フラッグシップの威厳を静かに取り戻した。