ニッサン セレナの整備は、いつもの2柱リフトが使えないところから始まった。福祉車両ゆえのサイドステップが、現場の判断を試したのである。
持ち上がらないという想定外
入庫した
ニッサン セレナは、福祉車両仕様の一台であった。オルタネーターの発電不良という診断自体は珍しくない。だが車体を見た瞬間、担当スタッフの表情が変わった。左右に張り出したサイドステップが、通常の2柱リフトのアーム位置と干渉することが分かったのである。無理に持ち上げればステップを傷める、あるいは車体を歪めるリスクすらあった。
福祉車両は乗降のためにステップやスロープが追加されており、標準車と同じ感覚でリフトアップできない場合がある。今回はまさにその典型で、アーム掛けのポイントがどこにも見つからなかった。ここで無理押しをしないのが、長年現場に立つ技術者の判断である。
ジャッキという原点回帰
結論として、作業は2柱リフトを諦め、フロアジャッキとウマによる昇降作業に切り替えられた。効率だけを考えれば遠回りだが、車両とステップを守るには最も確実な方法であった。
ニッサン セレナの車体下に慎重にジャッキポイントを探り当て、時間をかけて安全な高さを確保していく。
オルタネーター本体はエンジンルーム側からのアプローチだが、補機ベルトやブラケットへのアクセス角度は、車体の上がり方ひとつで作業性が大きく変わる。ジャッキ作業では視界も限られるため、部品の脱着はいつも以上に手探りの慎重さが求められた。装着されていたオルタネーターは経年による発電性能の低下が見られ、リビルト品への交換が決定した。
- オルタネーター交換(リビルト品使用)
- 2柱リフト使用不可のためフロアジャッキ・ウマによる作業
- 工賃の値引き対応
難所の先にある信頼
作業を終えたセレナはエンジン始動後、充電電圧が安定して回復した。リビルトオルタネーターは新品同等の性能を持ちながらコストを抑えられる選択で、福祉車両として日常的に使うオーナーの負担にも配慮した提案であった。工賃についても値引きで応じ、想定より時間を要した作業への理解に応える形となった。
2柱リフトが使えないという些細に見える制約が、実は車両の個性そのものを映していた。
ニッサン セレナの福祉車両仕様という背景を軽視せず、手間を惜しまなかった判断こそが、この一台の走りを静かに支えている。