

マーキングという地味な作業が仕上がりを決める
フロントバンパーの脱着は、フランク内のカバーと左右ヘッドライト付近のビスを外すところから始まった。だがその前に欠かせないのが、バンパーとボンネットの面差・隙間のマーキングである。今回のR8のような後期型は前期とグリル形状が異なり、部品情報をそのまま当てはめられない。マーキングを怠ると、戻した後のチリ合わせに想定以上の時間を取られる。地味なひと手間だが、ここで仕上がりの精度がほぼ決まるといっていい。 左右のエアダクトはさらに神経を使う箇所だ。ボルトを緩めると土台のベース部分まで一緒に動いてしまい、パーツの突き出し量が変化する。外す前にその状態を確認しておかなければ、組み付け後に段差やズレが生じる。加えてダクトはプラスチック溶接で固定されており、ヒートガンで高温にしながら慎重に軟化させて外す必要がある。熱しすぎれば変形し、冷めたまま力をかければ割れる。作業要領書に明記されるほど、この工程は難所として知られている。
リアまわりはビスの記憶とボディ保護の勝負
リアバンパーは上下2分割の構造で、下側は固定されているビスの点数が多く、しかも箇所によって種類や長さが異なる。どこに・どの長さ・どの種類のビスが何本止まっていたか、正確に記憶しておく必要がある。上側を外す際はウィングの取り外しが前提になるが、こちらは両面テープではなくボンドで強固に接着されている個体が多く、ボディを傷つけずに剥がすには相応の経験が求められる。ミッドシップにV10を積むR8スパイダーは、リヤまわりの構造理解なしに手を入れることができない車でもある。- フロントサイドグリル塗装(グロスブラック)
- リアバンパーダクト塗装(グロスブラック)
- エンジンフードダクト脱着分解・塗装(グロスブラック)
- サイドパネルメッシュ部塗装(グロスブラック)
- フューエルリッド脱着・塗装(グロスブラック)
- フロントワイパーアーム取付・塗装(サテンホワイト)

蓄積されたデータが次の一台を守る
エンジンフードダクトやサイドパネルのメッシュ部、フューエルリッドといった小さなパーツも、脱着と塗装を一つずつ丁寧にこなす必要がある。開口部の多いR8スパイダーは冷却と空力を兼ねたデザインのため、わずかな段差や隙間が外観の印象を大きく左右する。こうした難所を一つひとつ確実にこなせるのは、日頃から入庫する車両のデータを蓄積し、注意点を従業員間で共有しているからにほかならない。特定のモデルに固有の癖を知っているかどうかで、仕上がりの再現性は大きく変わる。 フロントワイパーアームの取付とサテンホワイトでの塗装も、同じ丁寧さの延長線上にある作業だった。派手さはないが、細部の仕上がりが全体の印象を決めるR8だからこそ、一つの妥協も許されない。今後も同様の個体と向き合うたびに記録を重ね、改善を続けていく構えである。


















