右リヤフェンダーのアウターとインナーが分離するほどの損傷を、交換せず板金で仕上げた事例である。ホンダ シャトルハイブリッド という一台を通じ、事故歴を残さない選択肢を考える。
荷室の広さと引き換えに背負う、リヤ周りの脆弱さ
ホンダ シャトルハイブリッドは、ミニバンとコンパクトカーの隙間を埋める設計思想で作られている。低床設計でクラスを超えた積載力を持ち、買い物も旅行もアウトドアも一台でこなす万能性が魅力だ。しかしその使い勝手の良さゆえ、日常の駐車場や狭い路地での接触リスクは常につきまとう。今回入庫した個体も、まさにその宿命的な部位、右リヤフェンダーを大きく傷めていた。
今回の依頼内容は右Rフェンダーと右リヤバンパーBP、いわゆる外装修理の保険案件である。作業項目には
右リヤフェンダー板金(インナー板金含む)と
右リヤフェンダー塗装(インナー塗装含む)、さらに
リヤバンパー脱着・修理・塗装が並ぶ。一見すると定型的な保険修理に見えるが、実態はそう単純ではなかった。
アウターとインナーが分離した状態からの引き出し作業
現場で最初に確認したのは、右Rフェンダーの損傷の大きさだった。アウターパネルとインナーパネルがすでに分離してしまっており、アウターには張りが残っていない状態である。ここで闇雲に引き出せば鋼板が伸び、板金作業そのものが破綻する。引き出す順番を見極める判断力こそが、この作業の核心だった。
インナーパネル側も一筋縄ではいかなかった。アウターと分離しているぶん変形箇所がきつく、鋼板が波打つように歪んでいたのである。そこで固くて平らな鉄の塊をバイスプライヤーで挟み込み、アウター・インナー双方を固定した状態を作り出した。この固定治具的な発想があって初めて、正確な引き出し作業が成立する。シャトルのような一体感のあるボディ構造ほど、こうした地道な工程の積み重ねが仕上がりを左右する。
交換ではなく直す、という選択肢を残す意味
他社であれば交換対応となるパネルも、当社では板金塗装で仕上げる。これは技術力の誇示ではなく、事故歴をつけたくないというお客様の切実な要望に応えるための姿勢である。パネル交換は修復歴として記録に残りやすく、将来の売却時に評価を下げる要因になりかねない。分離と波打ちという厳しい状態からでも直せる余地があるなら、その選択肢を示すことが専門店の役目だと考えている。
リヤバンパーについても脱着から修理、塗装、そしてファスナーやリテーナー、クリップといった細部の部品まで丁寧に取り替え、最後は全体のバランスを整える調整で締めくくった。ホンダ シャトルを日常の相棒として使い続けるオーナーにとって、こうした地味な工程の精度こそが、次の安心につながっていく。