ALPINA B7が、右フロントバンパーの傷を抱えて上賀茂に入った。派手さを競わない車だからこそ、直した跡を残さない仕事が問われる。
右バンパーの傷が、静かな車格を乱していた理由
B7の佇まいは、遠目には控えめである。だが右フロントバンパーの擦過は、その静けさの中でやけに目立っていた。派手じゃないエリートタイプという性格には、傷一つも似合わない。今回はバンパーの脱着と分解までを行い、内部の骨格から丁寧に整えている。表面だけを均す修理では、この車の質感には届かないと判断したためである。
作業は
フロントバンパー脱着・分解からスタートし、内部のクリップやステーの状態まで確認した。目に見えない部分の精度が、最終的な面のつながりを決める。ここで手を抜けば、光の反射で歪みが浮き出てしまう。ALPINAという車格には、そうした妥協が最も似合わない。
ショーファーカーの光沢は、後席から見た時に完成する
この車は後席がまるで飛行機のビジネスクラスのようだと評される。だからこそ、外装の仕上がりは同乗者の視界にも直結する。ドアを開けた瞬間に映り込むバンパーの光沢が乱れていれば、その質の高さは一瞬で崩れる。B7の修復では、面の連続性と塗装の艶を、乗り降りの動線から逆算して確認した。
あわせて、快適装備の不調にも手を入れている。サンルーフが開かないという症状には専用テスターで初期設定を実施し、作動確認は正常。しばらく様子を見てもらう形にした。エアコンが効かないという訴えはガス補充で対応し、いずれも後席の居心地を支える細部である。見た目の傷だけでなく、体感の快適さまで含めて整えるのが、この車にふさわしい仕事だと考えている。
走りの手応えは、オイルという地味な工程に宿る
車重があるのに軽く感じるというB7の走りは、高速域での安定性の高さに支えられている。速さそのものより、質のいい速さを狙った設計思想がそこにある。運転席に座れば、BMWらしい操作感がしっかり残っている。今回はエンジンオイルも交換し、その滑らかな回転感を下支えした。地味な工程だが、手応えの土台はここにある。
ボディの修復と機関の整備、両方を終えたALPINA B7は、つつがなくオーナーへと引き渡しとなった。見た目の静けさと走りの質、その両方が噛み合って初めて、この車らしい仕上がりになる。派手さを求めず、正しさを積み重ねる。それが上賀茂での今回の仕事である。