2001年式メルセデス・ベンツ G55 AMGロング。所有すること自体が意思表示であるこの車の、助手席の小さな箱ひとつにも、20年を超える歳月と持ち主の矜持が詰まっていた。
武骨さを選び続けるということ
G55は、そもそも快適装備を追い求める車ではない。ヘッドライト下にLEDポジションランプはなく、ウインカーレンズも昔ながらのオレンジやクリアの小ぶりな形状を保っている。樹脂製のシンプルなフェンダーアーチ、昔ながらのデザインを守るサイドモールやバンパーもそうだ。これらは古さではなく、意志の表れとして残されている。
インパネに目を移せば、巨大な液晶モニターなど存在しない。美しい木目調パネルと物理スイッチ、オレンジと緑の照明が灯るアナログメーターが並ぶ。ゲート式でカチッとした操作感を持つ伝統的なATシフトノブ、シンプルなレザーシート。ボールナット式ステアリングがもたらす重厚なハンドリングフィールも含め、この一台はあらゆる部分で「変わらないこと」を選び続けている車両である。
グローブボックス交換、その小さな箱の重み
今回ご依頼いただいたのは、グローブボックスの交換である。作業自体は決して大掛かりなものではないが、この車両ならではの難所が待ち構えていた。
最大の壁は、既存グローブボックスからの
キーシリンダーの移植である。長年使い込まれたシリンダーは、無理に力を加えれば内部の部品がバラバラに散ってしまう恐れがあった。ひとつひとつの爪の位置、樹脂の劣化具合を確認しながら、手の感覚だけを頼りに慎重に外していく。派手さのない作業だが、ここで焦れば元も子もない。
- グローブボックス本体の交換
- 既存キーシリンダーの移植作業
- 取り付け費用サービスでのご提供
助手席の前に、これからも残るもの
交換を終えたグローブボックスは、開閉時の手応えまで違和感なく仕上がった。メルセデス・ベンツ G55 AMG ロング のオーナーにとって、こうした小さな部品の一つひとつが、車両全体の佇まいを支えている。派手な改造ではなく、当たり前の機能を当たり前に保つこと。それこそが、この個体の価値を守る作業だと考えている。
木目調パネルやアナログメーターがそうであるように、グローブボックスもまた時代を超えて存在感を放つ部品のひとつである。FOURSIDEでは、こうした地道な整備を通じて、G55Lという稀有な一台がこれからも本来の姿のまま走り続けられるよう、丁寧に手を添えていきたいと考えている。