

要領書なき5ドアという壁
スズキ ジムニーノマド FCは、シリーズ初の5ドアとして登場したばかりの新型である。居住性と積載性を得た代わりに小回りは犠牲になったが、そのぶん街乗りからアウトドアまでを一台でこなす懐の深さがある。ただし現場にとっては話が別だ。社外品の取り付け前例がほとんど無く、Androidナビの要領書も存在しなかった。手探りで配線図を追う作業から、この施工は始まっている。 特に苦戦したのがステアリングスイッチとの接続である。ハンドル周りのスイッチ操作をナビに反映させる配線は、車種ごとに信号の割り当てが異なる。参考にできる資料が乏しい中、ジムニー本体の情報を手がかりに一本ずつ検証し、ようやく機能させるところまで漕ぎ着けた。地道な照合の積み重ねでしか越えられない壁だった。
配線を「見せない」というご依頼
今回、前後ドライブレコーダーとデジタルインナーミラー、ディスプレイオーディオを同時に取り付けるとなれば、車内を這う配線の本数は必然的に増える。お客様からの要望は明確で、配線をできる限り見せたくないというものだった。これはノマドに限らず、5ドア化でケーブルの取り回しルートが延びた分だけ難度が上がるご依頼でもある。 特にリア側のドライブレコーダー配線は、穴あけ加工を伴わずに隠す方針で臨んだ。ボディへの追加加工を避けながら、内張りの隙間を丁寧にたどってケーブルを通していく。目に見える成果ではないが、乗り込んだ瞬間に配線が気にならない状態こそ、この作業の狙いどおりの仕上がりだと言える。
白いボディを守る塗り分け
下回りの錆止めコーティングも、今回の施工で手を抜けない工程だった。ジムニーノマドは悪路走破性を前提とした車だけに、フレームやボディ下部の防錆は走行性能を支える土台でもある。しかし今回の車両はボディカラーが白であり、通常のシャシーブラックをそのまま吹き付ければ見える範囲に黒が回り込む恐れがあった。 そこでフレームなど隠れる部分にはシャシーブラックを、ボディに近く見え方に影響する箇所にはクリア塗料を使い分けて塗装した。防錆効果を確保しながら、白いボディの外観を損なわない仕上げである。ハーネスやブラケットの取り回しも含め、細部の判断の連続がジムニーノマドの一台としての完成度を支えている。

