ディフェンダーを選ぶということは、道具としての誠実さを選ぶということである。その哲学を背面のスペアタイヤカバーにまで宿すべく、FOURSIDEは一枚のパネルと向き合った。
還元主義が行き着く背面デザイン
ディフェンダー110のデザインは、ジェリー・マクガバン氏が牽引する「リダクティブ・デザイン」の思想が貫かれている。無駄を削ぎ落とし、必要な要素だけを残す。その哲学が最も凝縮される場所のひとつが、背面に据えられたスペアタイヤカバーである。ここに刻まれた「DEFENDER」の文字は、装飾ではなく機能美の証明として存在している。
だからこそ、この一枚をどう仕上げるかは車両全体の印象を左右する。フロントマスクやサイドラインがどれほど整っていても、背面のカバーが色褪せていれば、車両の哲学そのものが薄れて見えてしまう。今回の依頼は、単品のスペアタイヤカバーに対し、文字部分のラッピングとクリア塗装を施すという、一見小さくも本質的な作業であった。
ラッピングを守りながら仕上げる下地の緊張感
今回の作業でまず手がけたのは、文字部分へのグロスブラックPPFラッピングである。艶やかな黒でロゴを引き締め、素材感を際立たせる工程だ。だが問題はその後に訪れた。ラッピング施工後にパネル全体の下地処理を行う手順となったため、研磨や整えの作業中にラッピングを傷つけたり、端部を剥がしてしまったりする危険が常につきまとった。
通常であれば下地を先に仕上げてからラッピングに入るところを、この現場では順序が逆になった。工具の当たり方ひとつ、力加減ひとつでフィルムの縁が浮いてしまう緊張感の中、職人は一手一手を確かめながら下地を整えていった。目に見えない部分にこそ、ディフェンダーという車が持つ質実剛健さへの敬意が求められる作業だったといえる。
純正を超える艶で語るパネル一枚の価値
下地が整ったパネルには、クリア塗装を一枚しっかりと塗り上げた。単に保護するためだけでなく、純正の塗膜が持つ艶感や深みを一段引き上げることを目指した仕上げである。光の反射を見れば、その差は明らかだ。背面という目立たない場所でありながら、そこに宿る艶は車両全体の佇まいを静かに底上げする。
ディフェンダーというアイコニックな車両を所有する意味は、その無骨な美しさを維持し続けることにある。スペアタイヤカバーという一枚のパネルであっても、手を抜けば全体の説得力が損なわれ、丁寧に仕上げれば車の物語が続いていく。FOURSIDEが向き合ったのは、まさにその一枚に宿る価値そのものであった。