2022年式メルセデス・ベンツ Sクラスが、上賀茂の工場に静かに滑り込んできた。直列6気筒ディーゼルターボが刻んできた時間に区切りをつけるための、オイルとフィルターの交換である。
大排気量ガソリン並みの静けさが隠していたもの
Sクラスというクルマは、ディーゼルであることを忘れさせる乗り味を持つ。3.0リッターの直6ターボは330〜340馬力、71.4kg・mのトルクを9速ATと4マチックに託し、粛々と仕事をこなしてきた。オーナーはこの静粛性を信頼し、日々の移動を車両に委ねてきたはずである。だがその静けさの内側では、筒内直接噴射とアイドリングストップを繰り返すエンジンが、確実にオイルを消耗させていた。快適さの持続には、目に見えない部分での律義な手当てが要る。
ブルメスターのサラウンドやパノラミックスライディングルーフ、ヘッドアップディスプレイといった装備は、車内にいる限り劣化を感じさせない。しかしエンジンオイルだけは、乗り手の体感を裏切って静かに寿命を迎える。Sクラスのオーナーが違和感を口にする前に、こちらから手を打つべき領域である。
FUCHS GT1 FLEX3という選択と、見過ごせない数値
今回投入したのはFUCHS GT1 FLEX3 5W-40である。9速ATと4マチックの組み合わせで駆動系全体に負荷がかかりやすい構成のため、粘度特性の安定したオイルを選ぶ意味は大きい。オイルフィルターも同時に刷新し、濾過性能をゼロから立て直した。
- エンジンオイル交換:FUCHS GT1 FLEX3 5W-40
- オイルフィルター交換
- アドブルー点検・補充
ディーゼル車である以上、アドブルーの管理も避けて通れない。点検の結果、補充が必要な水準まで減っていたことが確認できた。排出ガス浄化に直結する液剤であり、残量不足は走行そのものを制限しかねない。オイル交換と同じタイミングで手を入れられたことは、このSクラスにとって理にかなった処置だったといえる。
次の数万キロへ向けた静かな整え
作業を終えたエンジンは、以前と変わらぬ静粛性で始動した。しかしその内側では、新しいオイルが金属の摩耗を穏やかに抑え、交換されたフィルターが清浄な循環を支えている。数値としては見えにくいが、確実に更新された部分である。
1,469万円から1,588万円という新車価格帯にふさわしい佇まいを保つには、こうした地道な手入れの積み重ねが欠かせない。Sクラスという車格は、派手な演出よりも、こうした律義さによって支えられている。次にこのオーナーがハンドルを握るとき、変わらぬ静けさの奥に、今回の作業が確かに息づいているはずである。