美しき「跳ね馬」を蘇らせる。Ferrari Roma リアフェンダー板金塗装の軌跡

アルミ素材という難題:素材の特性を熟知した繊細なアプローチ

今回の修理における最大の障壁は、ボディパネルに採用されているアルミ合金という素材そのものにありました。一般的な鋼鉄板とは異なり、アルミはスタッド溶接による引き出し加工が極めて難しく、一度伸びてしまうと元に戻りにくいという粘りの少なさが特徴です。そのため、無理な修正はクラックや歪みの増幅を招きます。弊社は素材の熱膨張率や物理的な特性を深く理解した上で、細心の注意を払いながら損傷箇所の形状を整えていきました。鉄とは異なる独特の手応えを感じ取りながら、手作業による緻密なハンマリングでベースを構築します。この段階での妥協は、後の仕上がりに致命的な差を生むため、経験に裏打ちされた「素材との対話」が不可欠なのです。

形状の再構築:プレスラインを復元する「基準面」の追求

歪みが最小限まで整えられた後、作業はパテによる精密な成形へと移行します。ローマの美しさを決定づけるプレスラインの復元において、弊社の職人が最も意識するのは「基準となる面」の創出です。広範囲にわたる歪みを確認しながら、高品質なパテを極限まで薄く、かつ正確に塗り重ねていきました。サンディングブロックを操る手元には迷いがなく、何度も研磨と盛り込みを繰り返すことで、失われたエッジと曲面を0.1mm単位で呼び戻します。指先の感覚だけを頼りに、パネルを撫でるように滑らかさを確認するその姿は、彫刻家が石塊から美を削り出す過程に近いと言えるでしょう。周囲のパネルとの整合性を完璧に保ち、オリジナルを凌駕する平滑性を追求しました。

下地処理の徹底:塗装の命運を分けるサフェーサー工程

パテによる造形が完了した後は、塗装の仕上がりを左右する重要な下地処理へと進みます。弊社はパテの表面に僅かに残るピンホール(素穴)を一つひとつ丁寧に埋め、表面の微細な凹凸を完全に消し去っていきました。その後、塗料の密着性を高め、防錆・シール効果を持つサフェーサーを均一に塗布します。この工程の真髄は、サフェーサー乾燥後の最終研磨にあります。ガイドコートを散布し、サンディングのムラを可視化することで、目視では捉えきれない微細な歪みまでも完全に排除しました。滑らかな陶器のような質感を得たパネルは、フェラーリが誇る官能的な色彩を受け入れるための、完璧なキャンバスへと昇華されます。ここまでの準備こそが、塗装の成功を約束します。

輝きの帰還:ジョルジオ・シルバーストーンの調色とぼかし塗装

いよいよ最終工程、フェラーリ純正色のメタリック・グレー「ジョルジオ・シルバーストーン(カラーコード740)」を纏う時です。この色は光の当たり方で表情を劇的に変えるため、調色には高度な色彩感覚が求められます。弊社は最新の測色機と職人の目合わせを融合させ、経年による微妙な色の変化までも考慮した「現車合わせ」の塗料を生成しました。塗装ブースでは、周囲のパネルとの色差を解消する「ぼかし塗装」を駆使。メタリックの粒子が等間隔に並ぶよう、スプレーガンの運行速度をミリ単位で制御します。クリア層を塗り重ね、磨き上げられたリアフェンダーは、再び周囲の景色を歪みなく映し出しました。ローマに相応しい気品が、今、完璧に取り戻されたのです。

GALLERY

DSC_0241-2
DSC_0280
DSC_0280-2
ローマ修理_48889
ローマ修理_48889
ローマ修理2_372092
ローマ修理2_372092
ローマ修理3_544178
ローマ修理3_544178
ローマ修理4_891265
ローマ修理4_891265
ローマ修理5_927002
DSC_0241
74723e37-e996-4796-af72-aa5c75dcfcf3

BRAND / MODEL

ブランドから記事を探す。