一枚の天井が語るSクラスの来歴

Sクラス|板金塗装|京都
京都の陽光を長く浴び続けたSクラスのルーフには、塗膜がわずかに層をなして浮く痕跡が残っていた。その一枚のパネルから、この車の歩みが見えてくる。 このSクラスは先代までの保守的な路線から脱却し、世界最高の自動車を再定義するという強い意志のもとに生まれた一台である。「最善か無か」という原点回帰の思想は、曲線を多用した官能的純粋なスタイリングにも、リアへ向かって下がるドロッピングラインにも表れている。だがどれほど優れた設計思想も、屋外駐車と紫外線の蓄積という現実の前では無力だ。フロントルーフパネルの塗膜は、見えないところで静かに疲弊していた。
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層間剥離という静かな異変

持ち込まれた際、ルーフフロントパネルの塗膜には層間剥離の兆候が見られた。表面上は艶を保っていても、下地との密着が弱まり、いずれ浮きや割れへと進行する状態である。Sクラスほどの車格になると、こうした劣化は一目で見抜きにくい分、見過ごされたまま進行しやすい。今回の修理塗装は、表面を整えるための作業ではなく、パネルの構造的な健全性を取り戻すための作業だった。 作業を進める中で判明したのは、このパネルが従来のボディーと同様の塗装が施されていない箇所だという事実である。通常通りの足付け作業を行っても、塗料の密着が不十分になる懸念があった。そこで各種プライマーを使い分け、下地との親和性を丁寧に検証しながら、同じトラブルが再発しないよう工程を組み直している。地味だが、この判断こそが仕上がりの寿命を左右する分岐点だった。
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Sクラスの魔法の絨毯を支える細部

Sクラスの真価は、路面の凹凸をカメラで検知しサスペンションを制御する「マジックボディコントロール」に象徴される、魔法の絨毯と称される乗り心地にある。半自動運転の先駆けとなった「インテリジェント・ドライブ」も含め、この車は先進性と安心感を両立してきた。だが、そうした先端技術を纏う車体もまた、日々の紫外線や洗車の積み重ねという地道な環境要因の影響を免れない。今回のルーフ不調は、その静かな蓄積の結果である。
  • フロントルーフパネルの層間剥離修理塗装
  • 下地状態に応じた各種プライマーによる密着処理
  • サンルーフ周辺に生じていたウォータースポットの軽度除去
Sクラス|板金塗装|京都

納車前の一手間が語るもの

この車両にはサンルーフが装備されており、開口部周辺にウォータースポットがうっすらと残っていた。修理の本筋とは直接関係のない箇所だが、納車時の美観を高めるため軽度な除去を行っている。見えるところも見えないところも整えてこそ、Sクラスの多面的な性格――重厚なショーファードリブンでありながら一級品の俊敏性を持つ器――に見合う仕上がりになると考えたからだ。 今回は得意先からのご依頼であり、長年の信頼関係に応える形での施工となった。ルーフという目立たない一枚から、車の来歴と持ち主との関係までもが透けて見える。Sクラスというカテゴリーに求められるのは、走りの快適性だけでなく、こうした一手間を惜しまない仕上げの姿勢なのだと、今回の作業はあらためて教えてくれた。
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