三菱 デリカD5 C2 Mパワーパッケージが上賀茂の工房に持ち込まれたのは、後部座席のエアコンが仕事を放棄した日のことである。マフラーの錆と冷気の途絶えは、同じ十一年という歳月が生んだ、二つの症状にすぎなかった。
四駆で積んだ距離の分だけ、下回りは傷んでいた
2011年式という車歴を聞いた瞬間、こちらの見立てはある程度固まっていた。デリカD5は本格四駆とクリーンディーゼルを併せ持つ稀有な一台であり、林道や雪道を厭わず走らせてきたオーナーが多い。今回の車両も例外ではなく、下回りに刻まれた錆の筋がその走行史を静かに物語っていた。
マフラーを外す段になって、その予感は確信に変わった。
締結ボルトの錆が想像以上に進行しており、無理に緩めれば折損しかねない状態だったのである。焼き付いた金属をひとつずつ温め、力の向きを見極めながら、時間をかけて丁寧に取り外していった。功を急いてパーツを破損することは、この車の履歴に対する礼を欠く行為だと考えたからである。
後部座席の沈黙は、家族の記憶が刻んだ不具合だった
ミニバンとしての顔を持つデリカには、フロントとは独立したリアエアコンが備わる。今回申し出のあった不調はこちら側で、操作パネルの仕様が年式・グレードによって微妙に異なるため、
まず正しい操作方法そのものを調べるところから作業が始まった。マニュアル類を突き合わせ、実車のスイッチ配置を確認しながら、原因の切り分けを進めていく。
後席は、子どもを乗せた家族が長い夏をやり過ごしてきた場所である。効きの悪くなった風は、そのまま酷使の証だった。エアコンクリーニングとパワーエアコンによるリフレッシュを施し、フィルターや配管周りの汚れを丁寧に取り除いていく。目に見えない部分こそ、次の十年を左右する。
交換部品ひとつひとつに、次の走行への配慮を込める
今回の作業でマフラー本体に加えて交換したのは、ガスケット、スプリング、専用ボルトである。
- マフラー本体一式
- ガスケット
- 取付用スプリング
- 締結ボルト
錆びたボルトをそのまま再使用しないという判断は、単なる部品交換ではなく、次の車検やロングドライブを見据えた安全への投資である。三菱 デリカD5 C2_Mパワーパッケージが持つ走破性は、こうした地味な足回りの積み重ねによって支えられている。家族を載せ、市街やオフロードを疾走するタフギアに対して、最善の仕上がりを目指した。
マフラーからの排気音が澄み、後部座席から冷たい風が流れ出したとき、この一台はようやく本来の姿を取り戻したといえる。四駆の力強さも、家族を乗せる快適さも、日々の小さな整備の上に成り立っている。次にハンドルを握る誰かのためにも、その事実を静かに書き留めておきたい。