
付属品脱着に潜む一本のリスク
右フロントドアの傷修理には、隣接パネルを含めた付属品の脱着が欠かせない。塗装面を整えるための当然の工程だが、クラブマンの場合はここに落とし穴がある。ドアハンドルの脱着角度をわずかでも誤ると、その動きがそのままドア本体への傷につながる構造になっているのだ。慎重さだけでは足りない場面である。 この車体特有のリスクに対し、当ガレージではトリムテープによる養生を徹底した。角度が悪化しやすい可動部にあらかじめテープを仕込み、工具や手の動きが逃げてもボディに触れない状態を作る。判断の速さより、事前の備えを優先した結果である。
ミラーカバー、塗装より手前にある勝負
右ドアミラーの修理では、カバーを分解した上での修理塗装を行った。クラブマンに採用されるソリッドブラックのミラーカバーは、光の反射が強く、わずかな擦れも目立ちやすい素材である。塗装の仕上がりを守るためには、実は組み付け作業そのものの精度が問われる。 そこで組み付け時にはフィルムを介在させ、パーツ同士が直接触れ合う瞬間を極力減らした。目に見えぬ工程だが、完成後の艶と均一な黒を保証するのはこの一手間である。塗装後の見映えは、塗る技術と同じだけ、触れない技術に支えられている。

クラブマンという車の個性を壊さない仕上げ
近年のクラブマンは、フロントグリルがすっきりとしたデザインへと変わり、リアの観音開きドアのテールランプにはユニオンジャック・デザインが標準採用されている。電子制御シフトノブによる上品な操作感も、この世代ならではの魅力だ。WLTCモードで17km/L台という燃費性能に加え、軽油を使える経済性も見逃せない。 こうした個性を持つ一台だからこそ、修理跡を残さない仕上げが求められる。傷修理と塗装、そして洗車まで含めた一連の作業を終え、右フロントドアもミラーも違和感のない状態へと戻った。難所を丁寧に越えることこそが、この車の価値を守る近道である。
