

曲面がすべてを語る車体
メルセデス・ベンツ CLSクラスは、4ドアでありながらクーペのような佇まいを持つ。ラインやエッジを極力削ぎ落とし、曲面の陰影だけで立体感を作り出す設計思想が貫かれている。だからこそ、バンパー一枚の歪みが全体の印象を崩してしまう。エレガントさとスポーティさの均衡は、この面の精度の上に成り立っている。 入庫した車両は、事故によってフロントバンパーが変形していた。目視では小さな歪みに見えても、指先で面をなぞると流れが途切れているのがわかる。この繊細さこそが、CLS450という車を扱う上での難しさであり、同時に手応えでもあった。
熱と手のひらで形を戻す
今回最も難航したのは、変形したバンパーの形状復元である。ヒートガンで樹脂をじっくりと加熱しながら、少しずつ元の曲面へと戻していく作業だ。急ぎ過ぎれば白化や歪みが残り、慎重すぎれば作業が終わらない。状態を都度確認しながら、左右のバランスと本来のラインを何度も見比べた。- フロントバンパー 脱着分解・修理塗装
- 右ヘッドランプユニット 脱着・光軸調整
- ヘッドライトリメイクペイント

光軸と艶が語る仕上がり
右ヘッドランプは脱着した上で光軸を調整し、レンズ表面はリメイクペイントで蘇らせた。曇りの取れたレンズは、夜間に点灯した際の光の輪郭がはっきりとし、バンパーの新しい曲面と呼応するように馴染む。CLS450の顔つきは、この左右対称の光の質感で決まるといってよい。 仕上がった面を掌で撫でると、事故の痕跡はどこにも触れられない。継ぎ目のない滑らかさと、光を受けたときの艶の連続感こそが、今回の作業がめざした答えである。CLSクラスらしい静かな迫力が、フロント周りに戻ってきたのを確かに感じる。




