2020年式のトヨタ アルファード、その車内には前オーナー家族との年月が刻まれていた。納車前点検という名の静かな対話を通じて、次の持ち主に手渡す準備を整えていく記録である。
4年分の記憶を抱えた個体
このトヨタ アルファードは2020年の登録から今日まで、後部座席にチャイルドシートを乗せて走り続けてきた個体だと察せられる。フロントガラスには細かな飛び石傷が層のように重なり、ワイパーゴムは硬化して拭き跡を残していた。前オーナーが日々の送り迎えに使い込んだ証拠である。
エアコンフィルターを外すと、花粉と埃が想像以上に堆積していた。家族を乗せる車ほど、車内の空気には気を遣ってきたはずだが、経年劣化はどうしても避けられない。この状態のまま次の持ち主に渡すわけにはいかないというのが、当ガレージの一貫した姿勢である。
電源を落とさずに命を継ぐ作業
バッテリー交換には、この車種特有の難所がある。電源を切った瞬間、ナビや時計、各種設定が初期化されてしまうのだ。そこで外部アダプターによる電源供給を行いながら交換するという、地味だが欠かせない手順を踏んだ。
この作業を怠ると、次のオーナーは真っ白なナビ画面と向き合うことになる。アルファードのような装備が濃密な車ほど、内部に蓄積された設定は多い。電源を絶やさず載せ替えるという一手間が、乗り換えた瞬間の違和感を消してくれる。
- バッテリー交換(外部電源供給による設定保持)
- オイルフィルター交換
- エアコンフィルター交換
- フロント・リアワイパー交換一式
- ガスケット交換
見えない部分にこそ宿る品質
ガラスクリーニングでは、視界を曇らせていた油膜と微細な傷の影響を丁寧に取り除いた。ETCセットアップも新オーナー名義で済ませ、FEYNLA ULTRAによるコーティングと外部入力キットの取付で、日常の使い勝手も底上げしている。
このトヨタ アルファードが次の家族のもとへ向かう前に、前の暮らしの痕跡を消しつつ、車としての機能は静かに継承した。派手さはないが、こうした積み重ねこそが上賀茂のガレージが守り続けている流儀である。