

ニュルブルクリンクが選んだ緑の正体
GTの中でも初代GT Rの限定色として与えられたグリーンヘルマグノは、ただの緑ではない。ドイツ・ニュルブルクリンクの北コースの異名「グリーン・ヘル」から名付けられたこの緑は、ゴールドパールやシルバーといった複数の原色を重ねることで、光の角度ごとに表情を変える深みを生んでいる。加えてマグノ、つまりマットカラーである以上、艶を出さずに質感だけを整えるという矛盾した要求が待ち構えていた。リアバンパーの脱着分解修理に取りかかる前段階として、この色をどう読み解くかがすべての起点になった。 過酷なコースで鍛えられた車体は、外装にもレーシングカーらしい緊張感を求める。パナメリカーナグリルに象徴される攻めた意匠と、上質なインテリアが同居する二面性こそがGTの魅力である。だからこそ塗装面の仕上がりが甘ければ、車全体の説得力が崩れてしまう。修理とはパーツを直すことではなく、その車が纏う空気を壊さないことなのだと、この一台が教えてくれる。
調色という名の交渉
マットカラーの艶感を再現するのは、光沢を出す作業よりもはるかに神経を使う。FOURSIDEでは複数の外資系メーカーの塗料を採用し、経験則をもとに塗料の選択と配合の比率を見極めていく。多いか少ないかではなく、光を乱反射させる粒子の密度そのものを調整する感覚に近い。- リアバンパー 脱着分解修理・塗装
- 左ステップカバー 脱着修理
- ストーンガードテープ再施工

手で触れて分かる仕事
塗装が乾いた後、光の下でバンパーの角度を変えながら周辺のパネルと見比べる。マットな質感は、艶とは違い誤魔化しが利かない。わずかな粒子の粗さの違いが、指先を滑らせたときの触感の差として現れてしまう。だからこそ違和感のない仕上がりに辿り着けたときの手応えは、言葉よりも先に指先が納得するものだった。 今回は特別値引きという形での対応も含め、GT Rのオーナーに寄り添う仕事を心がけた。緑の地獄を走り抜くために作られたこの車が、上賀茂のガレージで静かに本来の色艶を取り戻していく。派手さのない工程の積み重ねこそが、GT Rという車の品格を支えているのだと改めて実感させられる一件だった。















