アウディ A5 カブリオレがオークション市場からFOURSIDEへやってきた。見た目の美しさの裏に、電動ソフトトップとクワトロ機構という二つの精密機構が隠れている。受け入れ作業は、その静かな部分にこそ神経を注ぐ仕事であった。
白いボディの奥にある判断の分かれ目
ホワイトのボディは傷や色ムラが目立ちやすく、受け入れ時の外装チェックは普段以上に時間を要した。2017年9月登録のアウディ A5 カブリオレは、型式F5CYRCの前期モデルにあたる個体である。オークション経由の車両は前所有者の使用履歴が見えにくく、外観の美しさに惑わされず、下地から丁寧に状態を読み解く姿勢が求められた。
特に注意したのは電動ソフトトップの開閉部まわりである。わずか15秒で開き、18秒で閉じるアコースティックソフトトップは機構が緻密な分、オークション流通後の固着や擦れが潜みやすい。時速50km/hまでの走行中開閉という華やかな機能も、根元の滑走レールや防水ゴムの状態が健全でなければ本領を発揮しない。ここを見落とせば、後の商品化で必ず痛手になるという判断から、開閉動作を複数回繰り返して確認した。
クワトロという機構がもたらす確認項目の多さ
A5 カブリオレの核心は、やはりフルタイム4WD「クワトロ」と7速Sトロニックの組み合わせにある。252馬力、37.7kgf・mを発生する2.0L直噴ターボ(CYR型)は前後輪へ力を分配する構造上、駆動系統の点数がFF車より多い。入庫時の段階で見るべき箇所が自然と増えるのは、この構造ゆえである。
- ソフトトップ開閉機構の動作と防水シール
- クワトロ駆動系統とSトロニックの作動音
- バーチャルコックピットの表示異常有無
- 4シーターキャビンおよびトランク内部の状態
見落としが無いように確認しながら実施するという、この作業の根幹をなす方針は、決して特別な手順ではない。だが4WDとデュアルクラッチという二重の機構を持つ車両では、一つの確認漏れが連鎖的な見落としを生みかねない。だからこそ、工程を区切り、都度立ち止まって確認する姿勢を崩さなかった。
先進装備ゆえに生まれる手間と向き合う
アウディバーチャルコックピットは液晶一枚でメーター全体を表現する先進装備だが、受け入れ時にはこの表示系統の挙動も入念に見る必要がある。デジタル化が進むほど、目視だけで済まない確認項目が増えるのは必然である。実用的な4シーター空間とトランク容量の大きさは魅力である一方、収納部の隅々まで点検する手間も相応に増えた。
アウディ A5 カブリオレという一台は、オープンカーの開放感とセダン譲りの安定感を併せ持つ稀有な存在である。その価値を次の工程へ正しく引き継ぐために、入庫検査という地味に見える作業こそが品質の土台になる。派手さのない確認の積み重ねが、この車の美しさを支えている。