

前オーナーの使い方が透けて見えた下回り
スズキ エブリイワゴンはキャブオーバー型でエンジンを前席下に収め、荷室を長く取れる構造を持つ。その分、下回りは常に路面からの水と泥を浴び続ける宿命にある。今回の車両も下廻り洗浄をかけてみると、サビの初期症状がフレームの継ぎ目に点在していた。京都の冬場の凍結防止剤散布を何度もくぐり抜けてきた跡だと分かる。放置すれば進行するため、洗浄後すぐに防錆塗装を施し、延命の手を打った。 バッテリーは令和2年に交換された記録が残っていたが、それから年数が経ち、始動の粘りが落ちていた。今回はTuflongエコの40Bへ載せ替え、あわせてキーバッテリーも新調した。小さな部品だが、スマートキーの反応が鈍るとオーナーの日常のストレスに直結する。見えない部分への配慮こそ、15年選手に必要な作業だと実感させられた。
駆動系と油脂類、数値で語る整備の中身
エブリイワゴンはFRベースのパートタイム4WDで、4ATと5MTが選べる軽量設計の商用バンである。今回の個体は実用重視で使われてきた形跡が随所にあり、ドライブベルトには細かなひび割れが確認された。張りの緩みは燃費にもエンジン補機類の負荷にも響くため、交換で新しい張力を取り戻した。エンジンオイルはFUCHS SUPER GT 10W-30を選定し、オイルパンドレンコックもG/Kへ交換してオイル漏れの芽を事前に摘んでいる。 ブレーキオイルも部品代込みで刷新し、制動の要となる油脂を一新した。エアコンフィルターの交換も行い、車内に入り込む花粉やホコリを抑える備えとした。配線修理が必要になった箇所もあったが、これは年式相応の経年劣化であり、放置すれば電装トラブルに発展しかねない部分だった。一つひとつは地味でも、積み重ねが車検整備の本質だと言える。
フロントガラスの先に見える日常への帰還
フロントワイパーゴムは吹き残しが出ていたため交換した。小雨の日に視界が一瞬曇る、その瞬間の不安を取り除く作業である。エブリイワゴンは両側スライドドアで乗り降りしやすく、後席を畳めば荷室をフラットにできる懐の深さが魅力だが、その利便性を支えるのは地味な消耗品の手入れに他ならない。保安基準検査もあわせて通し、安全に走り続けるための土台を整えた。 15年という歳月は、エブリイワゴンにとって決して軽いものではない。だが下回りの防錆処理、駆動系の刷新、電装の点検という地道な積み重ねが、この先の数年をまた支えていく。京都の街中を軽やかに走り抜ける姿を思い描きながら、ガレージを送り出した。






