

潰れたプレスラインとコンパスが使えない事情
入庫したLBXの右リアドアは、事故によってプレスラインが潰れた状態だった。板金作業では通常、コンパスを使ってラインを均一に成形していくが、LBXのドア形状はその手法が通用しない。曲面の質感が独特で、道具に頼れないぶん、職人の感覚と経験がそのまま仕上がりに直結する車なのである。 そこで用いたのが、引っ張り基準を丁寧に作り、そこからプレスラインを成形していく方法だ。基準を見失えば、ライン全体の表情が狂う。どこに基準点を置くかという判断こそが、この作業の難所であり、同時に技術者の腕が最も試される瞬間だった。 同じような事故に見舞われたLBXオーナーがいれば、まず確認してほしいのはドアのプレスラインの通り方である。光の反射で見え方が変わるほど繊細なラインだからこそ、修理後の仕上がりに差が出やすい部位だと知っておいて損はない。
右サイドステップからオーバーフェンダーまで、面をそろえる作業
今回の施工はドアだけにとどまらない。右サイドステップの修理とサイドステップ脱着は両面での再施工とし、右リアオーバーフェンダーと右サイドシルカバーも交換した。部分的な補修ではなく、車体側面全体の面をそろえる意識で作業を進めている。- 右リアドア修理・付属品脱着
- 右サイドステップ修理・サイドステップ脱着(両面再施工)
- 右リアオーバーフェンダー交換
- 右サイドシルカバー交換
- 塗装一式・右リアホイール交換

小さなレクサスだからこそ求められる仕上がりの精度
LBXは「レクサスを小さくした車」ではなく、「小さなボディだからこそ成立する、新しいレクサスを作った車」だと捉えている。1.5Lの3気筒ハイブリッドを核に、静粛性や乗り心地まで含めて磨き上げられたこのモデルは、外装の質感もまた走りの一部として設計されている。 令和7年5月モデルではリヤショックアブソーバーや減衰力、EPSまで見直され、段差の衝撃を柔らかく受け止める方向へ熟成が進んだ。そうした車の性格を理解した上で修理にあたることが、見た目だけでなく走行時の質感まで事故前に戻すことにつながると考えている。 今回のようにドアのプレスラインが潰れる事故は、コンパクトSUVであるLBXにおいて珍しくない。基準の取り方ひとつで仕上がりが変わる車だからこそ、修理を任せる工場選びの段階で、こうした難所への理解があるかを確認しておくことが、結果として満足のいく仕上がりへの近道になる。









