

アルミ削り出しが突きつけた沈黙の難題
持ち込まれたB4のホイールは、左フロントと左リアの2本ともアルミ削り出し部分に損傷を抱えていた。塗装のキズであれば話は早い。だがこの削り出し面は、素材そのものの質感が仕上がりを左右する領域である。粗い番手で損傷箇所を削り落とす最初の工程からして、力加減ひとつで意匠を殺しかねない緊張を伴う作業だった。 アルピナが纏う「分かる人にだけ分かる控えめさ」は、こうした細部の精度によって初めて成立する。派手な主張のないボディだからこそ、ホイールの一筋の乱れが全体の品格を崩す。削るという行為の裏に、削りすぎないという判断が常に張り付いていた。
番手を上げるたびに変わる光との距離
粗い番手で形を整えたあとは、細かい番手へと段階的に磨き上げていく。ここで最も神経を使ったのがペーパー目の見落としである。一つの光源では均一に見えても、角度を変えた途端に細かな筋が浮かび上がることは珍しくない。B4の削り出し面はことさら光を反射しやすく、妥協が即座に露見する素材だった。- 粗い番手で損傷箇所を削り落とす工程
- 細かい番手への段階的な磨き上げ
- 複数の光源を使い分けたペーパー目の最終確認

ホイール以外にも向けた目線
B4の足元は、495PSのエンジンが生む730Nmのトルクをしなやかに受け止める要である。タイヤ脱着という工程が発生した以上、ホイールの修理だけで終える理由はないと考えた。作業の合間にタイヤの空気圧を確認し、必要な補充を行うとともに、キャリパー周辺の清掃も併せて実施している。 アルピナが求める「あらゆる速度域での上質な乗り心地」は、ホイール一点の美しさだけで成立するものではない。左フロントと左リアの修理を終えたB4は、削り出し面の輝きとともに、足回り全体の小さな安心も取り戻して工房を後にした。





