

フロントミッドシップが生んだ、見られるための車
アストンマーティン DB11 ヴォランテは、サーキットのタイムを削るための車ではない。リゾート地やシティクルージングで映えることを前提に設計された、ライフスタイルのための一台である。フロントミッドシップに積まれた4.0L V8ツインターボは、前後重量配分47対53という理想的なバランスを実現し、走りの軽快さと優雅さを両立させている。 8層構造のソフトトップを備えたヴォランテは、ルーフを開けば風とエキゾーストノートを纏い、閉じればクーペに匹敵する静粛性を取り戻す。リアシート背面のウッドパネルまで計算された仕立ては、外から見られることを前提にした美学の表れであり、ホイールもまたその一部として設計されている。
キャンディブラックに潜むオリーブの気配
今回修理したリアホイールは、ダイヤモンドカット部分にキャンディブラックを重ね、トーンダウンされたマット仕上げを施した特別な意匠である。単純な黒ではなく、オリーブがかった色味が微妙に混ざり込んでおり、その濃度と色相を正確に再現することが最大の難所となった。 さらにマット感の調整が加わることで、調色の難易度は一段と上がる。艶の出し過ぎは軽薄に映り、抑えすぎれば本来の深みが消える。DB11ヴォランテが纏うべき品格を損なわないよう、幾度も試し塗りを重ねながら現物合わせで調整を進めた。
外さなかったホイールにも手を入れる理由
ホイールを脱着した際には、キャリパーの清掃を同時に行うのが当工房の流儀である。今回は修理対象ではないフロントホイールもあえて脱着し、見えない部分までキャリパーを磨き上げた。これは依頼された作業の範囲を超えた、ディテールへのこだわりに他ならない。- リアホイール2本の修理塗装(ダイヤモンドカット・キャンディブラック調色)
- マット感を含めた質感再現への調整
- フロントホイール脱着によるキャリパー清掃









