

変色したFenixが語る、これまでの時間
フロントバンパーとボンネットに貼られていたFenixを剥がすと、パネルごとに違う焼け方をした素地が現れた。紫外線による経年劣化は均一には進まない。日照の当たり方、角度、素材の下地条件によって、同じ車体でも部位ごとに変色の度合いが微妙にずれる。レヴエルトのように面の情報量が多いボディでは、この差がそのまま仕上がりの説得力を左右する。 だからこそ調色は、一色を決めて終わりにはできない。車両のあちこちで色を確認しながら、その都度違和感のない塗料へと寄せていく地道な作業が続いた。彫刻的なラインが連続するボンネット周りでは、光の反射角が変わるたびに色の見え方も変わる。目で追い、手で塗り、また目で追う。その往復の回数が、後の艶の均一さを決めている。
底面まで見えるドアだから、手を抜けない
レヴエルトはシザードアを採用する。ドアを開けば、通常なら隠れる底面まで視界に入ってくる構造だ。左ドアのキズ修理塗装では、この特性を踏まえて下地から磨きまでの全工程を組み立てた。見える面だけを整えても、開いた瞬間に底面の粗が露呈すれば台無しになる。 下地の段階から「開いた状態で見られる」ことを前提に作業を進め、塗装後の磨きでも同じ意識を保ち続けた。カウンタックから続く一本のシルエットを崩さないためには、面の連続性だけでなく、普段は死角になる部分の質感まで揃える必要がある。手間は増えるが、この一台に関しては省略という選択肢がそもそも存在しなかった。
ディフューザーとバンパーに残った、走りの記憶
リアバンパーのキズ修理と、ディフューザー部分の補修塗装も今回の作業の核である。空力とデザインが不可分に設計されたレヴエルトにおいて、ディフューザーは単なる装飾ではなく機能部品だ。塗膜の仕上がりが粗ければ、その機能美を語る資格を失う。フロントバンパー下部のキズ修理も含め、路面との距離が近い部位ほど、塗装の密着と面の滑らかさに神経を使った。 その他の傷磨きまで含めた一連の作業を終え、光を受けたボディは部位ごとの色差を感じさせない一枚の面になった。ドアを開けても底面に破綻はなく、指先で撫でても段差を拾わない。1015馬力を路面に押さえつけるための造形が、そのまま静かな仕上がりの手触りとして残った。レヴエルトという車が持つ緊張感を、施工の側からも裏切らずに済んだと思っている。






