

型式「S710V」が語る、この一台の役割
アトレーバンのベース車両であるハイゼットカーゴは、S700系という2021年生まれの新世代である。型式に刻まれた「710」はパートタイム4WDを意味し、「V」はバンとしての基本形を示す。全長3,395mm・全幅1,475mmという軽規格の中に、荷室と取り回しのすべてを詰め込んだ設計だ。派手さとは無縁だが、その割り切りこそがこの車の存在意義である。 4WDを備えたS710Vは、舗装路だけを走る車ではない。配送、建築、農業、山間部の現場まで、路面を選ばず働くために4WDが選ばれている。今回入庫したアトレーバンも、そうした現場を日々往復してきた一台だと、損傷の位置と深さが物語っていた。
サイドシルに刻まれた損傷と、基準ラインを探す作業
今回の作業は左フロントドア脱着と左スライドドア脱着を伴う左サイドシル板金が中心である。損傷はステップ前方と後方の二箇所に集中しており、いずれも角が失われ、複雑なプレスラインが崩れた状態だった。 板金とパテ成形の精度は、基準となるラインをどこまで正確に引き出せるかで決まる。新車と寸分違わぬ形に戻すことは現実的に難しいが、崩れたラインの手がかりを探り、引っ張りながら答えを探す作業には、これまでの経験と知識のすべてを注ぎ込んだ。- 左フロントドア脱着
- 左スライドドア脱着
- 左サイドシル板金・塗装
- スライドドア下側補修

仕上がりが守るのは、車体だけではない
塗装を終えたアトレーバンのサイドシルは、複雑な形状に合わせて何度もパテを研ぎ直した末の仕上がりである。派手な補修ではないが、毎日荷物を積み下ろしし、乗り降りを繰り返す現場でこそ、この精度が意味を持つ。 壊れにくく、直しやすい仕事車という信頼は、こうした一つひとつの修理の積み重ねで保たれていく。アトレーバンという道具としてのクルマを長く使い続けるとは、性能だけでなく、こうした手当てを重ねる姿勢そのものなのだと、今回の作業はあらためて教えてくれた。











